大谷八朔は独り言が大きい

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レビュー 熔ける: 大王製紙前会長井川意高の懴悔録 (井川意高)

 

関連会社の金、106億円を個人的にギャンブルにつぎ込んで負けた男、 大王製紙前会長の井川意高氏が書いた懺悔録。

懺悔録と書いているが、井高氏は反省はしているが後悔もしておらず刑務所も従来の適応力でなるようになってしまった感が出ているため悲壮感は漂わず、回顧録の性格が強い。

 

以下記憶に残る点。

 

本人の仕事のエピソードからも、自身の著書の言葉からも

「世の中は善か悪か、白か黒かの二元論では決まらない」

と考えを持っている人間であることからも良くわかる。

そういった人間が、あえて「あたり」と「はずれ」が明確に分けられるバカラに嵌ってしまったというのはなんという皮肉。

 

「同じ人間であっても、立場が変わればモノの見方だって変ってくる。二元論で答えを決めつけてしまえるほど、人間は単純な生き物ではない。」

この言葉からは、自分の擁護の臭いを感じるけど、真理だと思う。

僕たちは灰色のグラデーションの中で生きている。

 

井高氏の祖父、そして井高氏自身も納得した「10人の味方をつくるよりも1人の敵をつくるな」という言葉。

これは敵は四六時中邪魔をしてくるし、敵を作らないように生活していれば味方は自ずと出来るということ、含蓄ある。

 

最後に、人間の愚行権について。

人間は愚行する権利を持っている。合理性だけで言えば山登りも出来なくなってしまう。

自分にとって不利なことであっても自己決定する権利、それが愚行権だ。

 

 

愚行権という言葉は耳慣れないけど、とても良いKey wordのように思える。

僕たちは愚かである権利を持つ。

ゆえに人は合理的でない行動をし、そこにドラマが生まれる。

人が不利益を被らないうちは、この愚行権を行使しても文句を言うべきではないのかもしれない。